プロ野球が一斉にキャンプインした1日の観客数で、12球団トップだったのは球界の盟主の巨人。だが公式発表の「2万4000人」という数字が波紋を呼んでいる。
キャンプイン前日の1月31日にナインへ「野性味」を求めたいと表明した巨人・原辰徳監督(56)は4日、第1クールを終えて「一足飛びには結論を出すことはできないが、シーズンの長丁場の中で続けてくれることを願っている」と練習での選手らの動きに一定の評価を与えた。
この2日間は球団OBの松井氏が視察。指揮官は「それぞれがいい影響の中で、自分のプラスに置き換えてくれるといいね」と“ゴジラ効果”を期待した。ただ、スタンドの客足には“効果”はうかがえず。この日は7000人、前日も6000人と平年並みだった。
これで突出してしまったのが、キャンプ初日の観客数だ。日曜だったとはいえ「2万4000人」は、メーン練習場のサンマリンスタジアム宮崎のまばらな人影からは想像できない数字だ。松井氏が臨時コーチとして12年ぶりに宮崎に帰還した昨春の初日でも、土曜で1万6500人止まりだった。
実は巨人のキャンプの観客数は、練習場が点在する「KIRISHIMAヤマザクラ宮崎県総合運動公園」の来場者全体から、車1台につき4人などと概算している。今年の初日は、同公園内でキャンプを張るJリーグの鹿島が大分と今年初の対外試合を行い、客席もかなりにぎわっていた。こうしたプラス要素もあって、強気の概算値を出したと思われるが…。
2月1日に最も注目を集めたのは、昨季日本一で同じ宮崎市内に拠点を置くソフトバンク。工藤新監督が就任し、米大リーグから加入した松坂のフィーバーぶりが伝えられたが、観客数は1万7200人だった。さらに約7000人も多い結果に巨人は素直に喜べない様子。球団内でも「さすがに盛りすぎだろう」と若干引き気味の反応だ。
巨人・原辰徳監督(56)が31日、選手に「ワイルドになれ!」と厳命した。春季キャンプ地の宮崎市に入り、毎年恒例の宮崎神宮に参拝。「今年は新成(しんせい)というスローガンだが、そこにもう一つ、野性味を加えたい」と語った。〈1〉納得いくまで練習しろ〈2〉人に頼るな〈3〉自分のスタイルを破れ―などナインに新境地を開拓させ、最強ジャイアンツを作ることを約束した。
真っ黒に日焼けした巨人ナインの輪に、原監督が加わった。皆の引き締まった表情を見渡してから、先頭を切って歩き出した。宮崎神宮での必勝祈願。リーグ4連覇、日本一奪回への船出を、宮崎の強い日差しが照らし続けた。
「待ちに待ったというか、身の引き締まる思い。野球人として非常にいい1日だね。今はいろんな期待を持ち、希望の強い時期にある。1年間、シーズンが終わるまで、この気持ちを全うしていきたい」
指揮官は「チームを一度、解体する。どんな布陣、構成になるか、私にも分からない」と話してきた。チーム指針は「新成」。ニュージャイアンツの土台作りが、2月1日から始まる。
「それぞれの選手が力を存分に見せつけてほしい。その中で我々(首脳陣)がしっかりと判断してチームを作り上げていきたい。今年は新しく生まれ変わり、そして大願を成就する。新成というスローガンだが、そこにもう一つ、野性味を加える。一人一人が強い自立の中で自分を鍛え、チームに力を与えてもらいたい」
現時点で、レギュラーを保証されている選手はいない。全員に求められているのが個々のレベルアップだ。そのために必要な部分が「野性味」だと説いた。チームの解体には、ポジション争いだけではなく、個人の意識改革も込められている。
「とにかく自立することが野性の本質的な部分だと思う。人に頼るのではなく、納得いくまで練習すること。『メニューを(淡々と)消化する』とか『今までこうしていたから』とかではなく、自分で考え、行動してほしい。それをそれぞれが加えてもらって、時間を使うことを希望したい。今年は野性的に戦う」
何時まで練習したっていい。何百、何千球と打ち込んだっていい。原監督は常に目を光らせ、隅々まで見渡しながら、レギュラーを発掘していく覚悟を示した。これまで、阿部の一塁コンバートや、沢村の中継ぎ転換など、様々な改革を行ってきた。打力向上に向け体感速度160キロの超高速マシンも設置し「真っすぐには、めっぽう強い巨人軍」も目指す。それもすべて、ワイルドさを前面に押し出してこそ達成できると感じている。
夕方、選手宿舎で行われた全体ミーティングでもナインに伝えた。
「昨シーズンは3連覇したとはいえ、決していい1年ではなかった。個人、チームは力を出し切れなかった。全員の能力を引き出して大願成就、日本一奪回を目指したい。全員で力を合わせて、巨人軍81年目、新たな一歩を歩もう。新しい歴史を作ろう」
弱者は不要。言葉の端々に、その強い思いを込めていた。(水井 基博)
◆Gキャンプの見どころ
▽4番争い 一塁にコンバートされた阿部、昨季開幕4番の村田に加え、原監督が期待を寄せる大田が4番の座を争う。
▽松井氏と岡本の初共演 3、4日に宮崎キャンプを訪問する松井秀喜氏が、ドラフト1位の岡本にどのような助言を送るか。
▽新主将・坂本 阿部に代わって主将になった坂本が、どんなリーダーシップを見せ、どうチームをけん引するか。
▽160キロマシン対G打線 原監督が160キロのマシンをキャンプに導入することを明言。「打てない人は恥をかくことになる」と予告した。
▽ローテ&守護神争い 菅野、杉内、内海による開幕投手争いのほか、宮国、今村、小山らが牙を研ぐローテ争い、そしてマシソン対沢村の守護神バトルも見もの。
打撃に関しては後は体作りとパワーアップが課題。
内田コーチにマンツーマンで指導してもらえば、3年目には1軍の4番
打てる選手になるかもしれない。課題は守備だな。
早々に一塁専任にした方が良い。打撃優先で。
こんな金の卵はしばらく出てこない
5阿部
9アンダーソン
4村田
7セペダ
6坂本
2相川
3岡本
3年連続でリーグを制覇した最強軍団に何があったのか?
「今年は厳しい」
最近、巨人軍.原辰徳監督は親しい関係者に、こう漏らしているという。
遡ること3か月。日本シリーズさなかの昨年10月、記者団を前に原監督は、すでに危機感丸出し
の過激なコメントを口にしていた。
「チームを解体するつもりで再編成する!」
無理もない。3年連続リーグ優勝は飾ったものの、CSで阪神に敗れて日本シリーズに出られな
かった悔しさを晴らすため、今季は"日本一奪回"を期しているはずだが、そう簡単にはいきそう
にないからだ。
「原監督は就任以来、今年が一番厳しい戦いを強いられる。"解体"を口にしているのは、その表れ
です」(ベテランのスポーツ記者)
本誌は先週、ペナント予想で巨人を3位としたが、最近まで巨大戦力と言われた"盟主"に何があっ
たのか。
それにしても、なぜ巨大戦力と称された巨人が選手のやりくりに苦労しているのか。
背景には(4)FA、外国人などの補強の大失敗がある。この記者が言う。
「実は、今年の巨人はオリックス金子千尋の獲得を前提に、今季の投手陣の組み立てを考えていま
した。ところが、金子が残留ということになり、目算が完全に狂ってしまったんです」
金子だけではない。「絶対に取れるはずだった」(前同)DeNAのモスコーソやグリエル獲りに
も失敗。捕手は相川亮二をヤクルトから獲得できたが、本命が楽天の嶋基宏だったことは、球界
関係者の間では常識だ。
もともと、FAなど他チームの人材に頼らざるを得ないところに問題があるとも言えるが、それは
(5)二軍から選手が育ってこない、という巨人の構造的な問題に、そもそもの原因がある。
「他チームがうらやむ素材もいますが、"上"が詰まっていて、なかなか実戦経験を積ませられなか
ったツケが出ていますね」(前同)
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