清原和博逮捕の衝撃(1)
 
最後まで消えなかった黒い「噂」

 噂は本当だった…。元巨人の清原和博容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕された。

 事の発端は2014年春、某週刊誌に「薬物疑惑」の記事が掲載されたことだった。当時、清原氏は現役を引退し、バラエティ番組を中心に、野球解説、パチンコ店のキャラクターなど芸能活動を主に行い、順風満々に映っていた。が、その一方で「薬」に関する噂が業界内を飛び回っていたのも事実だった。

 「足に大きな龍の刺青が入っているのは、某週刊誌に撮られてるから、世間も知っていると思うけど、肩の部分に入っている刺青は、もっとすごいよ。楕円形というか、昔の任侠映画に出てくるようなっていえば分かりやすいかな」と親しい関係者は語る。

 また、週刊誌報道にあったように、ちょうどそのころ「清原が薬をやっているらしい」「売人を探している」などの噂が飛び交った。

 バラエティ番組のプロデューサーらも、あくまで「噂」のレベルだが薬物疑惑のかかった清原氏の出演を見合わせる形となり、その後テレビから清原氏の姿は消えることになった。

 その年の9月、疑惑に輪をかけるように妻・亜希さんとの離婚を発表。愛してやまなかった愛息2人とも別れることになる。普段は本当に子煩悩の親だった。

 「子供たちが可愛くて仕方ない様子だった。次男は俺を超えるバッターになるなんて言ってたしね。息子たちの学芸会とか、イベントごとには人目を気にせずに、本当に良く行ってたよ。あんなに目立つから、普通は嫌がるのかななんて思うけど、お構いなしで、他の父兄に交じって声援送ってたりね。本当にいい父親ってかんじでしたよ」と前出の関係者。
 
 清原氏が姿を消してから約8か月。突然姿を現した。12月に行われた親友・佐々木主浩氏の野球殿堂入りパーティーだった。

 げっそりと痩せ細った姿は、集まった関係者そして報道陣を驚かせた。その変わり果てた姿に「本当に薬をやっているんじゃ…」と話す人も多かった。

 だが、実際にその場で会話をした関係者によると「ろれつも普通でしたし、確かに痩せてはいましたけど、思ったより元気そうでしたよ。冗談も言って笑ってましたし、薬物中毒には見えなかった。本当に中身はいつもの清原さんでした」と当時を振り返る。
 
 しかし、そのころ。当局が動き出していたのは誰も知る由もない…。

(続く:(2)薬物使用は「周知の事実だった」!?)

 

清原和博逮捕の衝撃(2)

 

公安による“徹底マーク”と“慎重な捜査”

 週刊誌による薬物疑惑報道が出た2014年以前から、公安は清原容疑者をマークしていた。

 それも2方向からだった。ひとつは警視庁、そしてもうひとつは厚生労働省地方厚生局麻薬取締部(通称・麻薬Gメン)。

 「以前からの交友関係、さらに様々な情報から、清原が薬物を使っているというのは周知の事実だった」とある捜査関係者は話す。

 ただし、相手は超有名人。高級ホテルや、一般人が出入りできないような場所で薬物を使用している可能性が高く、捜査は困難を極めたという。

 現役時代から、“闇社会”とのつながりがあったとされる清原。暴力団関係者などからの内偵捜査で瞬く間に情報が集まり、証言や目撃談などを集めた資料は莫大な量だったという。

 また、職務質問ができない麻薬Gメンたちは自宅前のゴミをあさり、何とか清原の体液がついた衣類、そして毛髪を集めようと必死になっていたという情報もある。

 2方向から捜査の手が迫っていた清原容疑者。本人はその気配を感じていたのであろうか…?恐らく気づいていなかったはずだ。

 現在の住居は都内の一等地に所在する高級マンション。家賃50万円とも言われるこの住居はセキュリティも万全で、まさか警察が乗り込んでくるとは思っていなかったように思える。

 「何もかも豪快な人ですが、一方で繊細な面もある。細かなことを結構気にするし、心配事があると根掘り葉掘り自分が安心するまで追求するようなタイプ。まさか自宅で薬をやっているとはね。自宅が安全と思っていたのか…」と関係者は声を詰まらせた。

 さらに「亜希さんが離婚して子供を連れて出て行った。まさか家族で住んでいた家でもやっていたのか…。今は彼に対して怒りしか出てこない」とも話している。

 結局、最後は警視庁が令状を取り、家宅捜査。自宅から覚せい剤と注射器3本、さらに吸引用とみられるストローとパイプが1本ずつ見つかり、現行犯逮捕。

 清原逮捕の波紋は、球界に大きな衝撃を与えた。

(続く:(3)盟友たちが信じた「絶対にやってない」の言葉…)

 
清原和博逮捕の衝撃(3)
 
 
仲間を、後輩を、そして恩師をも裏切る結果に…

 逮捕のおよそ20日前。ヤフオクドームで行われた名球会ベースボールフェスティバルに出場していた清原容疑者は、親友でもありライバルでもあった佐々木主浩氏と野球で対戦し、フォークボールを見事に打ち返してヒットを放った。

 その佐々木氏に対しても、「俺は絶対に薬なんかやっていない」と話していた。嘘だった。

 「ぶん殴りたい」――。佐々木氏はTV局のインタビューにこう答えた。


 清原逮捕の報は、野球界に大きな波紋を呼んでいる。マスコミ各社は、清原容疑者と縁の深い選手を対象に次々と取材を行った。

 “KKコンビ”としてPL学園時代に大旋風を起こした桑田真澄氏は、「嘘であってほしい」とコメント。巨人でともにプレーをした松井秀喜氏は「ただ驚いている」と言葉少なだった。

 一方で、コメントを出すこともできないほどショックを受けている人間も多くいる。

 清原がオリックス時代、同じマンションに住んでおり、公私ともに仲が良かった阪神・金本新監督がその一人だ。3日、報道陣にコメントを求められるも、「その話はなしで」とノーコメント。新監督の門出という大事な時期に、兄のように慕っていた清原の逮捕。心中穏やかではないはずだ。

 「PL学園派閥」も困惑している。立浪和義や橋本清、さらにドジャースに入団した前田健太らは、コメントの出しようがない。なぜなら、彼らにとって清原は「神」のような存在だからだ。各方面から取材要請が来ているが、すべて断っているという。

 そんな中、もっとも悲しんでいるのは恩師・故仰木彬監督、そして長嶋茂雄巨人名誉監督だろう。

 2005年、巨人を戦力外になった清原を「お前の花道は俺がつくってやる。大阪に帰ってこい」と救った仰木監督。1996年、西武をFAになった清原を「俺の胸に飛び込んで来い」と巨人入りを決断させた長嶋監督。

 くしくも長嶋監督は名球会ベースボールフェスティバルで清原に「君はまだまだ若い。頑張るんだぞ」と激励したばかり。この言葉に清原は「はい、ありがとうございます」と返す。そして、その数日後…。清原は恩師をも裏切ることになった。

 天国の仰木監督は、きっと悲しみにくれているだろう。(続く)