ヤクルト山中わずか96球プロ初完封、開幕6戦6勝

<広島0-5ヤクルト>◇11日◇マツダスタジアム

 ツバメのサブマリンの勢いが止まらない。ヤクルト山中浩史投手(29)がプロ初の完封勝利を挙げた。チームでは石川が4月25日の巨人戦(神宮)で完封して以来、2人目の完投勝利。広島打線を5安打、わずか96球で抑え込んだ。開幕6戦6勝と無傷の白星街道を突き進む山中の好投で、チームは2連勝の2位。ゲーム差1・5の首位阪神をピタリと追随する。

【写真】ヤクルト山中プロ初完封!カネヤン以来開幕6戦6勝

 ヒーローインタビューに申し訳なさそうに応えた。熱気冷めやらぬマツダスタジアム。山中の声はかき消されそうだった。「チームの勝利に貢献することが一番でした」と下を向いた。「早く代えてほしかったです。後ろには本当にいいピッチャーがいるので、勝つ確率はそっちの方が高いと思ってました」。およそ初完封したヒーローの言葉ではない。謙虚の姿勢を崩さなかった。

 言葉とは裏腹に、いやらしい攻めの投球だった。得点圏に走者を背負ったのは1度。3回2死二塁では、緩い123キロ直球で菊池を中飛。27個のアウトのうち、半数以上の14個をフライで片付けた。直球は130キロに満たない。「投げ急ぐ癖があるので、間を変えたり、モーションを外したり」と、タイミングを変幻自在に操った。さらにコースを突くシンカー、スライダーで料理した。

 原点を忘れないから、謙虚を貫ける。プロ入り2年目で味わったトレード。「正直本当に驚きましたね」。埼玉・戸田にある自宅のリビングには、ソフトバンク入団時の写真が飾られている。ホンダのバイクにまたがり、笑顔でサブマリン投法を披露しているものだ。「あそこから自分のプロ野球は始まった。忘れてはいけないと思う」と、見るたびに初心に帰る。

 6戦6勝。後押ししてくれたのが家族だった。妻早希さん(26)と長女花笑(かえ)ちゃん(1)は、これまでの5戦全てスタンドで観戦していたが、この日は自宅で観戦。「遠いので、仕方ない。でもジンクスは作りたくないので」。「雲の上の存在」と畏怖する黒田との対戦も「打線との勝負なので関係ないです」。一家の大黒柱は負ける気などなかった。

 「言葉は悪いけど、期待はしていなかった」。冗談交じりとはいえ高津投手コーチがそう話す存在。その山中がチーム今季2度目の完封勝利だ。右肘手術から館山が復活し、首位再浮上への課題だった先発の悩みも解消されつつある。山中は「本当に厳しい戦いが続く。これからも頑張っていきたい」。昨季まで未勝利の男が、虎追撃を狙うチームに欠かせないピースになった。【栗田尚樹】

 ◆山中浩史(やまなか・ひろふみ)1985年(昭60)9月9日、熊本県生まれ。必由館-九州東海大-ホンダ熊本を経て、12年ドラフト6位でソフトバンクに入団。昨季途中に新垣とともに交換トレードでヤクルトに移籍した。175センチ、82キロ。右投げ右打ち。推定年俸は1100万円。

 ▼山中が96球でプロ初完封勝利。96球以下で完封勝ちは13年6月13日木佐貫(日本ハム=91球)以来で、ヤクルトでは86年7月27日宮本が同じ96球で記録して以来の省エネ完封だ。これで山中は今季6戦6勝。開幕から6戦6勝は大谷(日本ハム)に次いで今季2人目、ヤクルトでは58年金田(9戦9勝)以来2人目になる。山中は昨年まで通算0勝2敗。前年まで0勝の投手が開幕から6戦6勝は、新人の50年荒巻(毎日)新外国人の53年カイリー(毎日)に次いで62年ぶり3人目となり、セ・リーグでは初めてのケースだ。

 

新垣とともにやってきた山本
結局、山本選手のほうが活躍している件


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