中畑清、栄光のゴールへ -元・名物番記者が語るプロ野球ちょっと裏話-|2chまとめ
 
連敗街道…激汗!! 

◆ 絶好調!

 「絶好調!」と叫んでからもう40年近い年月がたつ。中畑清、61歳。気がつけば星野仙一も昨年限りで楽天のユニホームを脱ぎ球界最年長監督である。

 東北は福島出身。4年前の東日本大震災では兄が手広く営んでいた酪農業にも甚大な被害が及んだ。2年前には最愛の妻・仁美さんを失い涙にくれた。しかし、不幸の連続もひとたびグラウンドに立つと暗さはおくびにも出さない。それどころか今春の沖縄・宜野湾キャンプでは、連日早朝から報道陣を引き連れて「キヨシ・オン・ステージ」のアカペラ熱唱。どこへ行ってもこの指揮官の周りは笑いが絶えない。

 ご承知の通り、巨人入団時から長嶋茂雄の熱烈崇拝者。絶好調男伝説も長嶋抜きには語れない。二宮、平田と共に「駒大三羽烏」として75年ドラフト3位で名門軍団の一員となる。当時の風貌は体こそ立派だが、サングラスのような眼鏡をかけて垢抜けない自称「田舎のプレスリー」。粗削りな打撃に失策やポカも多かった。並みの選手なら首脳陣に叱責されれば萎縮してもおかしくないがこの男だけは違った。常に明るく、前向きなプレーとポジティブシンキングは師匠である長嶋を意識したところから始まった。最初は無理をして「絶好調!」と叫んでいたが、やがて技術が追いつくと巨人の四番・サードを任され球界一の人気者へ。素質はあってもプレッシャーに押し潰されて脱落していく選手を何人も見てきた。「リトル長嶋」を演じ続けて現実のものとした稀有な例だろう。

 陽気さばかりが前面に出る中畑だが根は生真面目で義理人情に厚い男だ。評論家時代のこと。現役時に一緒に汗を流した戦友の山倉が引退後に不遇をかこっていると「俺の給料から差し引いても構わないから雇ってくれないか?」と言ってきたことがある。社の事情もあって実現はしなかったが、その男気と面倒見の良さに感服した。当時から将の器を併せ持っていたわけだ。

 DeNA監督として勝負の4年目。いまだに指揮官が一番目立つお家事情は感心しないが、若き大砲・筒香を筆頭に梶谷、ロペスなど戦力は徐々に充実してきた。監督より選手が話題をさらったときに栄光のゴールは見えてくる。機は熟した。

文=荒川和夫

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一時は8年ぶり単独首位も3連敗中、このまま上位争いに踏みとどまれるか

 DeNAが開幕から奮闘している。ここにきて3連敗とやや苦しんでいるものの、一時は8年ぶりの単独首位にも立った。まだ勝率5割以上をキープしており、Aクラスに入る実力は十分にあると言えそうだ。

 4番に座る筒香嘉智外野手の“覚醒”は間違いなく原動力の1つ。ただ、2009、10年と横浜ベイスターズ(当時)でプレーしたOBで、ヤクルト、日本ハム、阪神でもキャッチャーとして活躍した野球解説者の野口寿浩氏は、周りを固める選手の充実ぶりも大きいと見ている。

 まずは、新加入のロペスだ。巨人から移籍してきた助っ人は、筒香の後の5番を任され、本塁打と打点を量産している。

「ロペスの加入は大きいですね。DeNAはいいバッターを取りました。モチベーションはかなり高いと思いますね。『筒香の後ろをしっかり頼むよ』と言われて、“お任せ”で打ってるでしょうから。やっぱり意気に感じますよね」

 ロペスの調子がいいことで、対戦相手は筒香との対戦を避けられない。「打線はいい感じで流れている」(野口氏)状態だ。

 そして、怖い4、5番の前を打つ3番・梶谷隆幸外野手の存在も忘れてはいけない。今年は開幕から高い能力を発揮している。

見た目で誤解を受けやすかった梶谷、ファーム時代の秘話とは

 現役時代にチームメートだった野口氏は、梶谷について「見た目は誤解を受けますよね。『お前やる気あんのか』って。覇気が全くないように見えるじゃないですか」と苦笑いで話す。そして、「実は1回、彼がファームで結果を残していて、1軍に上げてもらえなかった時があったんですけど、僕も怪我で2軍にいて『野口さん、僕はなんで1軍に上がれないんですか』と、相談を受けたことがあるんです」と秘話を明かす。

 当時、野口氏は梶谷にあるアドバイスを送ったという。それは、周囲の「誤解」を解くためのものだった。

「『じゃあ、そこを謙虚に受け止めて、姿を変えてみようか。お前は普通にやっているつもりなんだけど、周りの目にはそう映っていないだ。流してやっているように見えてしまう。それはしょうがない。だったら、見え方をちょっと変えてみようか。一生懸命やってるようにポーズでいいからやってみろ』と言ったんです」

 これに対して、梶谷は「分かりました。やってみます」と答えたという。野口氏は「(梶谷は)自分では気づかなかったんですね」と話す。

「『1軍に上がって結果を出して、押しも押されもせぬ選手になったら元に戻っていいよ』と言ったんです。『でも、天狗だって言われないように気をつけろ』と。彼がどこまで覚えてるかは知らないですけど、そういうことを言ったことはありました」

 その後のブレークは、誰もが知るとおりだ。昨年は自己最多の142試合に出場するなど、DeNAには欠かせない存在となった。

「ああやって、気が入ってないプレーをしているように見えるんですけど、彼は決してそうではない。見てる人に誤解を与えやすいけど、彼は昔から一生懸命やってますから。足は速いし、肩は強い。でも、あんなに打球を遠くまで飛ばすとは思わなかったです。体は大きくなってきてますね。以前はもっと細くて、スピードだけでしたから」

 本人の努力が実を結び、今年の活躍につながっていると野口氏は見ている。筒香、ロペスとともに、この先もチームを牽引していくことは間違いない。

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DeNAには「苦しい時期」を支えられる存在も

 さらに、今年のDeNAにとっては投手陣の奮闘も大きい。野口氏は「久保は相変わらずのらりくらりな感じだけど、モスコーソは安定してます。あと、一番大きいのはやはり高崎健太郎の頑張りじゃないですか。潜在能力が高い選手は揃ってるんですよね。速い球を投げる選手が多い。井納にしてもそうですね。そういう選手たちが抑え方を覚えたら、それは勝ちますよね」と分析する。

 では、DeNAは優勝争いに絡めるのか。野口氏は「苦しい時期は絶対に来ます」と言う。3連敗と早くも最初の踏ん張りどころが来ているようにも見える。ただ「苦しい時期」を乗り切る術も、今年のDeNAにはあると野口氏は見ている。

「年寄りが2軍で控えてますからね。苦しい時に彼らが出てきて、支えてくれるんじゃないですか。なんでも知ってますからね。いいことも悪いことも知ってますから」

 現在、2軍で調整中の三浦大輔、高橋尚成など、経験豊富なベテランの力が必要な時は必ず来る。そして、それがDeNAの本当の強さを見せつける瞬間になるかもしれない。

 昨季まで9年連続でBクラスと低迷が続いてきたDeNA。9月、いや10月まで主役を演じることができるか。

フルカウント編集部●文 text by Full-Count

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